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木質系床材

天然木製の廊下・板の間の塗替え

ひと時代前の住宅では板の間張りの廊下が設けられていたものですが最近では大半がフローリング製の床となっています。
天然木ムク材使用の板の間や階段などは既製品のフローリングとは異なった独特の趣があります。
このような部位にはニス仕上げの施されている場合が多く普段から家人の歩行するところですので塗装に用いられるニスは十分な塗膜強度と木材下地への密着性が求められます。そのため床用のニスにはポリウリタン樹脂系の塗料が用いられてきました。木地に着色をしてから塗布、あるいは木地の色を生かすためそのまま塗布するなどの方法で仕上げられています。もし、キズがついたり塗布されたニスが剥れてしまった時など材質が天然木のムク材や一部の集成材などであれば木材表面への研磨・研削作業が可能であり塗膜の全面剥離による塗替えも行えます。
この点が表面のみに薄いツキ板を張ったフローリング製の床と異なる強みでもあります。キズが浅ければ塗装面のケアで対応することで処置し、キズが深かったり塗膜の痛みがひどければ剥離、木地への研磨をした上で再塗装の処置を行います。

以下はムク材床面(縁側の廊下)での施工例です。

縁側からの重量物搬入時に施した養生を撤去したところ、養生を貼っていたテープごとニス塗りの塗膜が剥がれてしまい、補修の必要に迫られた状況です。ふつう廊下など板の間の多くは一定巾の板材を長手方向に並べて張ったものが多いのですがこの例では一枚物のムク材で珍しいものです。部分補修も考えられますが現状の既存面のニス塗膜の状態は、剥がしたテープ面へ塗膜が付着する程度の能力しかないと判断されます。施主様の要望もあり全面剥離作業での再塗装となりました。

施工前(ニス塗膜が剥れてしまい素地が露出している)

【養生作業】

周囲への汚損を防ぐため初めに養生作業を行います。襖の敷居や無塗装の木枠、柱にはあらかじめ粘着力の弱い紙の養生テープを貼っておき、その上から粘着力の強いガムテープなどの養生テープやマスカーテープを貼るなどして養生撤去時にテープ養生部の木部木地や既塗装面の損傷を防ぐ考慮をします

【剥離剤による既存塗膜の剥離作業】

剥離剤を薬品刷毛を用いて塗布します。ドロッとしているので塗る感覚よりものせて延ばし広げるという感じで行い、既存塗膜の種類や状態によりますが浸透量が大変多いので塗布量も吸い込みを見ながら剥離剤が塗膜上を覆うよう加減します。大半の剥離剤は塗膜除去後に水洗いなどによる洗浄が必要ですがここで用いている製品は作業終了後、数時間放置しておけば残存成分が揮発・蒸散してしまうので洗浄作業の必要はありません。下地が木材の場合は水洗いによる吸水は避けたほうがよいのでこの点でも最適です。
塗布直後〜数分放置すると既塗装面がブクブクと泡立ちはじめタダレたようになると塗膜の剥離が容易に可能です。
ヘラを用いて浮き上がった塗膜を取り除いて行きます。木地が柔らかな木材などの場合はプラスチック製のヘラなどを使用しキズを付けぬよう注意が必要です。
剥離作業の様子
既存塗膜が複数の層によって構成されている場合など一度では剥がしきれない時は剥離剤の塗布と除去を繰り返す必要があります。事例では部分的に再度繰り返しました。
剥離作業の済んだ様子
剥離剤使用により旧塗膜が取り除かれ木地が現れます。表面に残っている薬剤分はウエスで拭取ってから数時間〜半日程度放置することで剥離剤成分の蒸散をうながします。(水洗いは不要)

【研磨作業・下地調整】

薬剤分乾燥後に電動工具や手がけによるペーパーがけで木地を研磨します。除去しきれなかった残存塗膜や薬剤使用による塗膜のカス、木地表面の浅いキズなどはこの作業により取り除かれます。使用するペーパーの番手は80〜120番位から初めます。剥離剤の使用が困難であったり使用しない時などは40〜60番位のもので荒削りによる塗膜除去から始めることもあります。
研磨作業後の木地表面
仕上げ磨きのペーパーは240〜320番程度で行いますが建具類のように特にデリケートな仕上げを要求される場合は400から600番位で仕上げることもあります。掃除機を用いて研磨粉、ほこりなどを全て取り除き清浄な面とします。
ここで養生部に付着している研磨粉や剥離カスが塗装面に落下することを防ぐために一度、養生を部分撤去して再度、養生をし直します。塗装施工部と非塗装部の境界での縁切りや見切りを美しく、スッキリさせ当該箇所の養生効果を万全に期す目的も兼ねます。この後、木地下地面の点検と清掃をもう一度行います。着色剤による木地への色づけをする時はここで行います。この事例では木地の色を生かしたクリヤー仕上げとしたため着色はしていません。

【下塗りについて】

木地の吸い込み止め、素地固めのために水性サンディングで下塗りを行います。
下塗塗布直後の様子
このような平坦で広い面では塗布面に材料を配る目的にローラーを用い、それを刷毛引きによって塗り広げます。木地への吸い込みを見ながら2回に分けて塗布します。(状況により吹付けで行うこともあります)
このような透明仕上げでの下塗塗料にはサンジングシーラー(サンディング)と呼ぶ種類のものを用います。木材木地表面の導管を埋める目止め効果があり塗布乾燥後のケバ取りと塗面調整でのペーパーがけが行いやすい塗膜を持つ材料です。水性タイプのものからラッカー系、2液型ウレタン系のものなどがあり使用する仕上げ塗り材に応じて選択します。木地と仕上げ塗り材との中間層に位置する塗膜はそのどちらにも密着性が優れています。(事例では水性タイプのものを使用)

【素地調整・ケバ取り研磨作業】

下塗乾燥後の様子
下塗材の塗布により木地が濡れ色に映えて見えますが表面の手触りは木質繊維のケバたちでザラ付いています。
下塗乾燥後、ケバ取りと塗面調整のためにペーパーがけを行います。下塗り材で固められた木地表面のケバ立ちと刷毛ムラなどを研磨することでならし平滑に研ぎ出します。使用するペーパーの番手は320〜400番位で行い、よりシビアな仕上げを要求される時などは600〜800番程度のもので仕上げます。着色時は色づけした下地まで削り取らぬよう注意が必要です。
全面ペーパーがけ後、研磨粉を掃除機などを用いて取り除き清浄な面とします。必要に応じてメタノールアルコール、アセトン、ラッカーシンナーなどの溶剤拭き(塗布済みの下塗塗膜が溶解せぬよう下塗塗料の種類に応じた選択が必要です)や水拭きをしておきます。
仕上げ塗り前
塗面調整、研磨、清掃作業後の様子
かまち付近

【仕上げ塗りについて】

透明仕上げ用の仕上げ塗り塗料は各種ありますが事例では水性ウレタンクリヤーを用いています。この製品では仕上がりの光沢度合いに応じて艶消し(フラット)・半光沢(5分艶)・光沢の3種類があります。これらを調合して事例では7分艶程度に仕上げました。体育施設などの床用に塗膜の強度がより強い製品も用意されています。
仕上げ塗り塗料の塗布方法は下塗の時に準じますが素地の吸い込みがほとんどないので1回あたりの塗布量は少なくなります。1度での厚塗りは厳禁ですが2回目以降は乾燥が不十分だと刷毛ムラが起きやすいので注意が必要です。
仕上げ塗り直後の塗膜表面
水性タイプの透明塗料などは塗布中に気泡が発生し易く、そのまま放置すると気泡によるブツブツが乾燥塗膜に残ってしまうので要注意です。その場合塗面調整(肌調整)は乾燥後に極細目のペーパー(600〜1000番程度)を掛け補修します
施工後
施工後(かまち付近)

施工前

施工後

木部に施された透明仕上げが簡単に剥れてしまう理由はニス塗膜の劣化以前の問題として、その塗装方法が考えられます。塗装施工時に行うペーパーがけや付着物、油分などの汚れの除去も十分に必要ですが下塗塗材が仕上げ塗り塗料と相性の合わないものを用いた場合には、互いの塗膜同士で密着不良が起こります。木部用油性ニスとして以前から普及しているものに油変性ポリウレタン樹脂ワニス(弱溶剤系1液型)がよく用いられています。一方、この下塗塗料としては天然樹脂塗料の仲間であるセラックニスが古くからよく使用されています。溶剤がアルコール系で速乾性のセラックニスは扱い易く、木地の着色に用いたオイルステインの色押さえ(乾燥の遅い仕上げニス塗布によるにじみ防止)や素地固めなどに用いられました。油変性ポリウレタン樹脂ワニスは乾燥時間がやや遅いものの美しい独特のアメ色に仕上がり、床面への使用による塗膜強度も確保されていてセラックニスとの組み合わせによる透明仕上げでの木部内装枠や建具類への施工は広く普及しました。
どちらの塗料自体も木材下地への密着性は優れています。ところがこの両者を塗り重ねた場合の相性は悪く、互いの密着性に劣るため、床面などに施工された場合、家人が頻繁に歩行したり家具などの加重や衝撃が加わることでお互いの塗膜の層間で剥離が起こるのです。アルコール系であるセラックニスの乾燥塗膜は水分に出会うと白化変質してしまうなどの問題点も多いので最近の現場施工での主流は水性ウレタン系の製品での施工が多くなっています。このほか木製床面の透明仕上げ塗料として強靭な塗膜性能を持つものに強溶剤2液型のポリウレタン樹脂塗料がありますが居住者が生活している内装リフォーム工事などの現場施工には溶剤使用の問題もあるので一般的とは言えません。木部透明仕上げ用の水性塗料は種類も性能も優れた製品が多く市販されてきているので耐久性や居住者、作業者の健康への点でもこれからの主流となるでしょう。

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